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本のススメ#1「昨夜のカレー、明日のパン」

「昨夜のカレー、明日のパン / 木皿泉

 

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 初めて実家を出て一人暮らしを始めた時、いかに親に愛されていたのかを実感した。

 

 自分で生活のサイクルを回していかなければならなくなった時、生かすということは膨大な手間、労力、お金がかかることを知った。もちろん僕の親は「生かす」なんて気持ちは持っていなかったと思う。けれど、多くの面で負担になっていたことは間違いなかったはずだ。

 

 わがままばかりを言っていた。しょうがないことなのかも知れないが、子供の頃の僕は「当たり前」のことを「当たり前」とすら認識出来ていなかった。自分が愛にどっぷりと浸かっていることに気づいていなかった。与えられたもので満足出来ず、もっともっとと欲しがる僕を、それでも親は変わらぬ愛で包んでいてくれた。

 

 スーパーに買い物に行くたび買ってもらったスナック菓子。連れて行ってもらった自然公園。汗疹が治らない僕の為にいくつも揃えてくれた塗り薬。自分の足では行くことの出来なかったドーナツ店。

 かつて与えられたものが目に入るたび、切ないような安心するような不思議な気持ちになった。他の人から見ればとりとめのないものが、大きな愛の下から離れた僕には一つ一つがその愛の残滓のようにも思えた。

 あの頃僕を生かし支えてくれた愛が、一人で生き始めた僕の背中を確かに押してくれていた。

 

 一人の生活に慣れてしまうと、そんな気持ちも忘れかけてしまう時がある。

 それでもこの本を読むと、僕を見守ってくれている愛の姿を再びハッキリと捉えられるようになる。